書籍や字幕の翻訳とは異なり、産業翻訳では、誰が何を翻訳したかが明らかにされないことが多いといえます。では、翻訳を依頼する側が、「いつも同じ翻訳者でお願いします」「この前と同じ翻訳者でお願いします」と言うことはできるのでしょうか。
結論から申し上げますと、言っていただくのは全く問題ないものの、完全に希望どおりになるかどうかはわからない、ということになります。翻訳者を指定するような要望があった場合、翻訳会社は、まずその要望に応えられるかどうかを検討します。翻訳者に打診し、報酬やスケジュールの都合が合えば依頼できるということになります。
特定の翻訳者に依頼を確実に引き受けてもらうには、翻訳会社を経由せず、フリーランスの翻訳者に直接依頼するという方法もあります。翻訳会社に依頼するよりは費用が抑えられることが多く、翻訳者の考えていることもよくわかるというメリットがある一方で、
- スケジュールの調整がつきにくい(調整がつかなかったときに代わりの翻訳者を探すのが大変)
- 翻訳者の急な都合で納期に間に合わなくなったときに手当てできない
- 個人で処理できる量には限界があるので大量に翻訳が必要な場合は複数の翻訳者を管理しなければならない
- 正確さ・一貫性が確保されるかどうかわからない。レビュアが入らないため、その訳が本当に適切かどうか、正しいかどうかの検証がおろそかになる可能性がある。また、用語、言い回し、表記の統一に漏れが生じることもある
というようなデメリットもあります。
このような翻訳者の指定のほかに、翻訳会社では、お客様のさまざまな質問、要望、感想を承っております。たとえば、この間の翻訳はよかった/悪かったというフィードバックをいただくのは、翻訳会社としてはありがたいことです。内容によっては、次回の依頼にすぐ反映できることもあります。翻訳をどう評価しているか、ときには翻訳会社に伝えることをおすすめします。