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翻訳メモリが大きすぎると?メンテナンスの重要性と運用管理のコツ

同じところに繰り返し発注しているので慣れているはずなのに、翻訳会社からの問い合わせや申し送りがいっこうに減らない、納品された文書が思ったような訳文になっていない、とお感じになったことはありませんか?こうした問題は、メンテナンスされていない、サイズが大きい翻訳メモリ(Translation Memory、TM)に原因がある場合があります。

というと「翻訳メモリの訳文データは多ければ多いほど役に立つのでは?」とお感じになる方もいらっしゃるでしょう。より多くの訳文データが登録されていればいるほど、翻訳時にマッチする可能性が高くなり、訳文の品質維持やコスト削減に役立つ、というのは、常に正しいとは限りません。場合によっては作業の効率を落とすこともあるのです。

この記事では、メンテナンスされていない大きな翻訳メモリによって起こる可能性がある問題と、それらを避けるためのメンテナンスと運用管理のコツをご紹介します。

メンテナンスされていない大きな翻訳メモリが原因で起こる問題の例

1. 問い合わせや申し送りが減らない

翻訳を依頼するたびに同じような問い合わせや申し送りが来て、その対応に時間を取られてしまうということはありませんか?

2. 用語や言い回しが過去の文書と一貫していない(大量の修正が必要になる)

「旧版と異なる用語が使われている」「見出しと本文の文体はスタイルガイドに規定されているのに、守られていない」といった悩みをお持ちではありませんか?こうした問題は、ただ訳文データを蓄積していただけの翻訳メモリをメンテナンスすることで回避できる可能性があります。

翻訳メモリのメンテナンス

翻訳メモリのメンテナンスは、簡単にいうと、内容を確認して適宜変更を加えることです。なんだそんなことかと思われそうですが、さきほどの問題との関連でもう少し詳しくご説明します。

問い合わせや申し送りが減らない場合のメンテナンス

まず、依頼するたびに同じような問い合わせがくる場合を考えてみます。「前にもこの質問に答えたことがあるし、スタイルガイドにも書いてあるのだが…」ということであれば、翻訳メモリで類似する原文を検索してみてください。スタイルや用語の規定に違反している訳文が見つかったら、そのデータを修正しておきましょう。同じ原文に対して複数の訳文が存在しなくてはいけない場合は、複数の訳文がちゃんと登録されているようにします。

用語や言い回しに一貫性がない場合のメンテナンス

次に、前回依頼したときの訳文と、今回の訳文の用語や言い回しに一貫性がないという問題が発生するのはなぜでしょうか。たとえば、「過去ある時期まではこの用語や言い回しを使用していたが、少し前に変更になった」というような場合は、翻訳メモリに新・旧両方の用語や言い回しが登録されていることがあります。このような場合は、TMに含まれている古い訳語や言い回しを検索して修正するか、思い切ってそれらのデータを削除するとよいでしょう。

翻訳メモリの運用管理

翻訳メモリの運用管理に関しては、訳文をカテゴリ分けするための仕組みを用意することをおすすめします。そうすることで、翻訳メモリの精度や使いやすさがさらに向上するでしょう。

たとえば、潜在顧客向けの資料を翻訳する営業部門と、一般向けの資料を翻訳するマーケティング部門とでは、同じ用語(単語)に違う訳を必要とすることが珍しくありません。このような場合は、営業部門とマーケティング部門の訳文データを区別できるようにしておきます。翻訳メモリそのものを2つのファイルに分けることもできますし、翻訳メモリの数を増やしたくない場合はメタデータを活用して翻訳メモリの作成時に訳文のカテゴリ(営業、マーケティングなど)を設定することもできます。

訳文データに設定できるメタデータの例

翻訳メモリでは、個々の訳文データにメタデータを設定することができます。訳文のカテゴリ以外にも、登録者、プロジェクト名、登録日時、レビュー済みか否かなど、さまざまな項目を含めることができます。この情報を活用して、たとえば、「このプロジェクト名の訳文を優先して参照する」、「レビュー済みでない訳文データは、必要に応じて変更して構わない」というようなおおまかな基準を伝えることもできます。

まとめ

翻訳メモリは大変便利ではありますが、そのままで万能というものでもありません。似たような文節が違う文脈で使われたり、規則に沿わないものが1つ登録されたりするだけで、その後延々と問題を生じさせてしまうことがあります。ですから、メンテナンスと運用管理がとても重要になります。

翻訳メモリのメンテナンスや運用管理をどうしたらよいか分からない場合は、翻訳会社に質問・相談してください。翻訳メモリを精査して問題になりそうな点を洗い出し、今後の運用管理についてご提案することも可能です。

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