100%マッチなのにデータが使えない!なぜ?

翻訳メモリ(TM)を使うと、原文と訳文の組み合わせである「翻訳データ」を蓄積し、新しい翻訳で似たような文や用語が出てきたときにそのデータを活用できます。

このTMを翻訳支援ツールに設定すると、翻訳する原文とTM内の文が比較され、それらがどのくらい似通っているかが「マッチ率」で表されます(「翻訳メモリとは?」「翻訳メモリのマッチ率とは」の記事でくわしく説明しています)。

マッチ率は0%から100%の間で表され(※翻訳支援ツールによっては100%以上のマッチ率もあります)、100%マッチとは原文が既存の翻訳データと完全に一致していることを意味します。また、文書内で繰り返し出現する原文は、「繰り返し」というカテゴリに入ります。繰り返しは、最初に出現した原文を翻訳してTMに登録すれば、2回目以降に出現した場合に100%マッチとなります。翻訳対象に100%マッチや繰り返しの原文がある場合、翻訳データを再利用できるため、時間や費用を節約できるというわけです。 ただし、実はここには大きな落とし穴もあります。

100%マッチの訳文を使えないケースその1:
コンテキスト(文脈)に応じて訳文の表現を変える必要があるケース

このケースは、eラーニングや、マニュアルの見出しと本文の組み合わせなどをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。英語で作られたコンテンツでは、視覚的なページ(PowerPointのスライド アニメーションのようなページ)とナレーション(音声)で、同じ文が使われていることが多くあります。

hira_51_01.pngこのような場合、たとえばページ部分を一度翻訳すると、ナレーションの同じ文に100%マッチで訳文を適用することはできます。しかし、日本語の場合は言葉を補ったり、ですます調で表現したりするナレーションとは違い、ページ部分は簡潔な体言止めで表現することがほとんどです。

hira_51_02.pngこのため、100%マッチだからといってページ部分の訳文をナレーションに適用すると、ナレーションまで簡潔な体言止めになり、明らかに不自然になってしまいます。

100%マッチの訳文を使えないケースその2:
意図するものが異なるケース

こちらは、Webサイトやスライド資料など、短い文が多く使われるドキュメントでよくあるケースです。

たとえば機能追加に関するページを翻訳したときに、「NEW」という原文に対して「新機能」という訳文を登録したとしましょう。その後、新しく発売する製品に関するページを翻訳するとします。「NEW」に対する100%マッチとしてはすでに「新機能」が登録されていますが、新しく発売する製品のページなので「新製品」や「新発売」などの訳文のほうが適切です。

hira_51_03.jpg100%マッチの訳文を使えないケースその3:
原文が数値のみのケース

次のような仕様一覧があったとしましょう。

hira_51_04.png日本語で個数を表す場合、数え方(助数詞)を入れることが一般的です。

例の1行目はディスプレイを数えているため、「2台」になります。2行目の数字も、100%マッチを使うなら「2台」になりますが、ケーブルなので「2本」が適切です。

hira_51_05.pngこれは、仕様や構成一覧などの表でよく見かけるケースです。

まとめ

ここまで、100%マッチの訳文を使えないケースを説明してきましたが、もちろん効果的に使える場合もあります。更新版のマニュアルのように旧版の翻訳を使って新しい記述だけを翻訳する場合や、製品カタログとWebページに同じ説明文を使用している場合などは、100%マッチの訳文をそのまま使用すれば、一貫性を保てるうえに時間や費用を節約できるというメリットがあります。

TMをうまく活用すると作業期間を短くしたり、費用を抑えたりすることができますが、TMをどのように活用するかは、翻訳対象の種類に応じてその都度検討したほうがよいといえます。見積もり依頼時や翻訳発注時に相談してみることをおすすめします。

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